忸怩たる思い(じくじたる思い)の意味、誤用すると恥の上塗り?

この言葉、なんとなく知っているつもりでも、
いざ「どんな意味か?」と聞かれると、なかなか答えられないですね。

忸怩たる思い(じくじたるおもい)


しかも「こんな感じの意味かな」と
テキトーに想像すると、たいてい間違ってしまいます。

そのため、そのまま誤用されていることが多く、
さらに、まちがっていても、
それに気づきにくいという、おそるべき言葉です。



一度、キッチリと意味を確認しておくといいでしょう。





どんな言葉なのか


忸怩たる思い(じくじたるおもい)とは
自分の言ったこと、やったことを、
とても恥ずかしく思う、深く恥じ入る、という意味です。


「ひじょうに大きな失敗をしてしまい、忸怩たる思いだ」
という使い方をします。


「忸怩(じくじ)」とは
恥ずかしく思う、心に恥じるという意味で、

見なれない漢字ばっかりなので、これについても調べますと

忸(じく・じゅう)・・・はじる・なれる
怩(じ)・・・はじる・はじいる


どっちも「恥ずかしい」という意味で、
それをふたつ並べて「忸怩」、
つまりよっぽど恥ずかしいんでしょうね。


なのでこの「じくじたる思い」とは

「片思いの男の子と帰り道いっしょに歩いたけど
恥ずかしくてあんまり話せなかった」
とかそんな、ほほえましい場面で使うのでなく、もっと深刻な、

「創業250年にもなる伝統ある会社を
私の代で倒産させたことについて、忸怩たる思いにかられる」
みたいな深刻な使い方がふさわしいです。


これらはみんな誤用


それで、この忸怩たる思い、
最初にのべたように、よく誤用されている言葉のひとつです。

腹が立つ
くやしい
憤り(いきどおり)を感じる
思い悩む

このような意味で使われることが多いですが、
みんな誤用ということになります。


まあ「じくじたる思い」という文字の雰囲気から想像すると、
「じくじく」「ぐじぐじ」「うじうじ」
などを連想しやすいですし、
そうなると、上記のような意味と考えてしましそうです。

この場合、ガツンと怒る! みたいな潔いものでなくて、
雨の中、ドロに靴が半分うまってしまったときのような、
なんかやるせない、どこにもぶつけようのない怒りを
腹に抱えているような印象になっちゃいますね。

これはまちがえやすいですよ。


その場で辞書を引いて意味を調べでもしないかぎり、
はじめて「じくじたる思い」と聞いて
恥ずかしいという意味は想像しにくいですから。


このあたりが、誤用されやすい原因なんでしょう。


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なぜ間違いに気づきにくいのか?


面白いことにというか、おそろしいことというか、
この「忸怩たる思い」という言葉は、
たとえ誤用してしまったり、まちがえた意味で覚えていても
会話がある程度なりたってしまいます。



どういうことかと言いますと、たとえば

「わたしは、絵が『幼稚園児みたいに下手だ』と評されたことに対して、
忸怩たる思いにかられた。そこで猛特訓をして上達した」

といった場合。

これは、ここまで読んだ方ならおわかりだと思いますが、

「絵が下手と言われたことが恥ずかしかったので、がんばって上手くなったよ」
という意味になるわけです。


これを
「忸怩たる思い = くやしい思い」
と間違った意味で覚えた人が読んだ場合、こんな解釈になります。

「わたしは絵が下手と言われてくやしかったので、がんばって上手くなった」
これはこれで、意味が通じてるじゃないですか。
くやしいので練習したという、ごく自然な文になります。


こんな感じで、この忸怩たる思いというのは
あらためて調べるか、だれかに指摘されないかぎり
誤用というのに気づきにくいんです。


だからといって、「くやしい思い」などと間違えたまま覚えていると
こんな使い方をしてしまったりします。


「先生の絵が『幼稚園児みたいに下手だ』と評されたことに対して、
わたしは忸怩たる思いにかられた」


尊敬する先生の絵がバカにされたのがくやしい、
という意味で使ったとしても、
「じくじたる思い = 恥ずかしい」
と正しく覚えている人が聞くと、

「先生の絵が幼稚園児みたいといわれたのに
なんであんたが恥じ入るの?」

ということになってしまい、誤用というのが一発で分かります。


とっさに使ってしまうかも


まあこんな、「忸怩たる思い」なんて
むつかしい言い回しは、
日常生活で使う人はあんまりいないと思います。

だけど、こういう言葉、
何かのはずみで使っちゃったりするんですよね。
会社で失敗しちゃったときに
「このような初歩的なミスをしてしまい、忸怩たる思いです…」
とかいった具合に。

この言葉の意味から考えると
わりと深刻な場面で使うことになるでしょうから、
恥の上塗りにならないようにしたいものです。



どうせ相手だって間違えて覚えているですって?

まあそうかもしれませんが、
むつかしい言葉だろうと意味を知っている人は
意外といるものなので、注意したほうがいいでしょう。

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