情けは人の為ならずは誤用されるが本当の意味は深かった
多くの人が知っているけど
意味を間違って覚えている人が
とても多いのが
情けは人の為ならず(なさけはひとのためならず)
「役不足」とならんで
誤用されている言葉のツートップ
といってもいいくらいのものです。
ただ、このことわざを
座右の銘としている人もいますので
そういった人と会話をしても大丈夫なように
正しい意味を知っておいたほうがいいでしょう。
こういうことわざなんです
情けは人の為ならず(なさけはひとのためならず)
とは、人に情けをかけると
それがめぐりめぐって自分のためにもなる
という意味です。
![情けは人の為ならず](http://kotowaza-kanyouku.com/wp-content/uploads/2016/02/GREEN20160902534715_TP_V-300x200.jpg)
誰かに親切にしてあげると
トクをするのは当然その相手ですが
それだけではなくて、
それが原因で、自分もよい思いができる、
だから人に情けをかけるのは
人のためだけではなく自分のためでもあるのだよ
ということわざですね。
これが正しい意味です
そうなのですが……。
このような誤用が広まっている
2001年の文化庁の調査によれば
半数近くの人が
情けは人のためならずの意味を
間違って覚えているとのデータがあります。
![間違えている](http://kotowaza-kanyouku.com/wp-content/uploads/2016/02/YOTA93_udewokumubiz15121216_TP_V-300x195.jpg)
その間違っている意味というのが
「情けをかけるのは、
かえってその人のためにならない」
というもの。
現在でもこのように使っている人、
けっこういるんじゃないでしょうか。
このように解釈してしまうのは
情けはひとの為ならず、という
古めかしく分かりにくい
言い方が原因のひとつでしょう。
正直、この言葉だけを聞くと
まちがった方の意味で解釈してしまうのも
しょうがないと思います。
「情けをかけるのは人のためではなく自分のためだ」
なんてもってまわった捉え方は、
普通はしないですからね。
ただ、このことわざ、現代文になおすと
「情けは人のためではない」
となります。
むつかしい文法の話は省きますが
人のためではない(=つまり自分のため)
という意味なのです。
![文法](http://kotowaza-kanyouku.com/wp-content/uploads/2016/02/150415342006_TP_V-300x195.jpg)
人のためにならないという意味なら
「情けは人の為なるべからず」
ということになります。
これが多くされている誤用ですね。
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なんで自分のためになるのか
正しい意味が分かったとしても
「じゃあなんで情けをかけるのが
自分のためになるんだよ!」
という疑問がでるかもしれません。
これについて、分かりやすい理由が、
「だれかに親切にしてあげると
その人はいつか恩返ししてくれるよ」
というものです。
![握手](http://kotowaza-kanyouku.com/wp-content/uploads/2016/02/akushu-300x225.jpg)
辞書などの例文でもたいてい、
「仕事で困っている後輩をたすけてあげて以来、
ずっと恩に感じてくれて
なにかと自分の仕事を手伝ってくれる
やはり情けは人のためならずだね」
みたいな感じでのっています。
だから人には親切にするべき、ということですね。
ふつうは良いことをされたらはお礼をしたくなるものですし、
そういった人が自分の周りにふえるのは心強いもの。
なのでこれはこれでひとつ考えだと思います。
ただ、この意味だけでとらえていると、
つぎのような場合にこまるかもしれません。
世の中、受けた恩をきれいに忘れる人もいます
![忘れられる](http://kotowaza-kanyouku.com/wp-content/uploads/2016/02/MAX76_idouwoiiwatasareta20140531_TP_V-300x200.jpg.pagespeed.ce.ah99dgBf9d.jpg)
実際には、自分が誰かにやってあげたことに対して
みんながみんな、何かを返してくれるとはかぎりません。
せっかく助けてあげたのに
礼のひとつもされなかったら
「情けは人の為ならずなんてウソだ」
と考えたくなるのが人情というもの。
そこで当然、
そんな恩知らずには情けはかけない、
とう考えもあるわけですが、
もう少し考えをすすめていくことにします。
このことわざの深いところは、
「めぐりめぐって」
つまり思いもよらないところから
自分にかえってくるという意味でしょう。
さきほどの仕事の例でいきますと
ふだんから人に親切にしている
↓
「あいつは仲間を大事にしている」と
みんなに思われる
↓
結果、人望があつくなり
仲間とチームワークが取れているとみなされて
リーダーを任されたり昇進したりする
ということもあるわけです。
情けは人の為ならずというのを
「あいつにこれをしてあげたから
こういったことをしてくれて当然!」
みたいなギブアンドテイクの意味で
考えると裏切られることもあるので、
「ふだんから人に親切にしていると
いつか自分のためになる」
という、自分の行動原理として
覚えておいたほうが座右の銘などにはしやすいでしょう。
![こうしよう!](http://kotowaza-kanyouku.com/wp-content/uploads/2016/02/150912335966_TP_V-300x200.jpg)
なんだか風が吹けば桶屋が儲かるのような気の長い話に思えそうですが、
急がば回れといいますし
目先の利益ばかり考えるより
先々のことまで考えるほうが最終的に自分のメリットになりやすいです。
まあ実際にはこういった
「いつかくる」よいことのために
情け深い人物になるというのは
なかなかむつかしいものですが、
それだからこそ
情けは人のためならずというのが
わざわざことわざとして
言われるようになったのかもしれません。
反対の意味、つまり誤用されている
「情けをかけると人のためにならない」
ということわざは
情けが仇
情けも過ぎれば仇となる
などがありますので
こちらを使うといいでしょう。
※追記
コメントでとても参考になるご意見をいただきました。
「人にやさしくすると、心がなごみます。この「なごみ」がそのひとのすべての面に影響していくのです」
くわしくはコメント欄をごらんいただければと思いますが、この考えなら相手がどうだったかに関わらず、情けをかける行為自体が自分のためになり、見返りなどを期待する必要もなくなりそうです。
「ひとに情けをかけると自分自身の心が豊かになり、それが自分のためによい結果をもたらす」
これが「情けは人の為ならず」の意味としてふさわしいように感じました。
やはりこのことわざは奥が深そうです。コメントに感謝いたします。
「人にやさしくすると、心がなごみます。この「なごみ」がそのひとのすべての面に影響していくのです」
くわしくはコメント欄をごらんいただければと思いますが、この考えなら相手がどうだったかに関わらず、情けをかける行為自体が自分のためになり、見返りなどを期待する必要もなくなりそうです。
「ひとに情けをかけると自分自身の心が豊かになり、それが自分のためによい結果をもたらす」
これが「情けは人の為ならず」の意味としてふさわしいように感じました。
やはりこのことわざは奥が深そうです。コメントに感謝いたします。
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今頃、コメント差し上げるのも気が引けますが、通りがかりの者としてひと言、付け加えさせて下さい。
このことわざの意味は「恩や仇」だけの問題だけでなく、気持のあり方の問題でもあります。
人にやさしくすると、心がなごみます。この「なごみ」がそのひとのすべての面に影響していくのです。性格、行動、考え方などに影響し、俗な言い方ですが、「なごみオーラ」を発散させるのです。ですから初対面の人でも、すぐに仲良くなれるし、気兼ねなく付き合えるのです。
>「恩や仇」だけの問題だけでなく、気持のあり方の問題でもあります。
この考えはとても大切だと思いました。
これならば人に情けをかけること自体が自分のためになるので、このことわざの解釈としてより適切だと感じます。本文にも追記させていただきます。
また何かお気づきの点がございましたらお教えいただければ幸いです。
貴重なコメントありがとうございます。
素晴らしですね。
文化庁でさえ、正確に伝えることができていない、このことわざ。
多くの人が間違った認識を持つ理由もわかりますね。
コメントをみて、みずしまさんが素直に納得されている点が、ものすごく重要だと感じました。それは、「教え」ではなく、「気づき」。学校で教えられたことは忘れても、自分で気づいたことは忘れないものです。
その意味でも、suisei さんのコメント「ひと言、付け加えさせて下さい」は、本来の日本人が伝えてきた「気づき」を導き出す表現でじつに勉強になると思いました。お二人に感謝いたします。
>「教え」ではなく、「気づき」。学校で教えられたことは忘れても、自分で気づいたことは忘れないものです。
これは心当たりがあります。
ということは知識を得るときはその内容だけでなく、そこから「何を見つけたか」が大切になるように思いました。
また、だれかにものを教えるときも、たんに知識を伝えるだけでなく「そこから相手がどんなことに気づくか」が大切とも思えます。
コメントありがとうございます。