的を得るが辞書に載っている!?あちこち調べた結果

本当に誤用なのか?

的を得る(まとをえる)


数ある慣用句の中でも、
これはわりと多くの人が使っていると思います。


それで、この「的を得る」という言い方、
長らく正しいのか間違いなのか
よく分からない状態が続いています。



どちらかというと
的を射る(まとをいる)が正しく、
的を得るは間違いだ、という説が
主流だったのですが、

最近、この「的をいるえる問題」に、
大きな出来事がありましたので、

この慣用句の意味とともに
紹介していきたいと思います。


軽くおさらい


ご存知の方も多いと思いますが
的を得る(まとをえる)とは
ものごとを正確に、要点をついている
という意味です。


くわしくは、こちらの記事で述べているので
あわせてごらんいただければと思います。
的を射るの意味と、「的を得る」が本当に間違いなのかについて


こちらの記事で、意味などについては
ひと通り書いていますので、この記事では

「的を得る」という言い方が
正しいかどうかについて焦点をあてていきます。



「的を得る」って結局正しいの?


上の記事でも述べているのですが
ほとんどの辞書に載っているのは
「的を射る」で、「的を得る」は

・まちがいである
・いやいやそういう言い方もあるよ
・むしろ「的を得る」のほうが正しい!


など、いろいろな意見が飛び交っています。


でまあ、どうしてこうなった?
というのは、おいておいて、
最近の重要な出来事として

三省堂国語辞典 第7版に
「的を得る」が載った。


ということがあります。


これはかなり大きなできごとで、
あ、大きなできごとといっても
大半の人にとってはこの問題自体、
どっちでもいいよと思われるかもしれませんが

そうじゃなくて、
あくまでちゃんと言葉について知りたい
という人にとって大きなできごと、ということですね。


まあともかく、

三省堂国語辞典は、有名な辞書ですし、
これに載ったということは、
今後、みとめられていく可能性があります。



というか、すでに認められていると考えられるかも?


辞書に書いてあることが絶対かどうかはともかく、

普通の感覚では
「辞書に載っている言葉は正しい」
わけですから。

じゃないと、私たちは
なにを基準に言葉の正否を判断したら
いいのか分かんなくなります。


「権威ある辞書に載っているから
なんでも無条件に信じるのはイヤだ!」

という方のために補足しますと、

ここでの「得る」は「うまく捉える」
の意味と解釈できるのが理由のようです。


たしかに、そう考えると
的を得る=物事の本質を捉える
と考えられますね。


まあ、数ある辞書の中のひとつに載っただけ、
とも考えられますが、それでも今までよりは、
少し地位が上がったことにはなります。


じゃあ「的を射る」はまちがい?


そうなると、今度は
的を射るはまちがいなのか?
という疑問がでてきます。

でもそういうわけではなく
先ほどの三省堂国語辞典をみますと

「的を射る」
「的を得る」
両方載っています。



まあそれはそうで、
それまで正しいとされてきて
今もそこらじゅうの辞書に載っている
「的を射る」を突然まちがいだ
と言われても困ります。



一方で、「的を得る」も
辞書に載ったことになるので
かならずしも間違いとは言えないのでしょう。


ねんのため、補足しておきますが
三省堂国語辞典はことわざ辞典ではないので
「的を得る」そのものは載っていません。
「的(まと)」の項目に補足として載っています。


したがって、たとえば、
正しいかどうか口角泡を飛ばす大激論になって

「よーし! 辞書で確かめようじゃないか!!」

と、青筋立てながら「的を得る」をさがしても
サッパリ出てこなくて「あわわ」となるので
必ず「的(まと)」の項目で確認しましょう。

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ほかの辞書はどうなの?


いくら三省堂が権威ある辞典とはいえ
世の中には他にも国語辞典はたくさんあります。

それらはどうなっているのか
気になったので、調べてみました。


まずは、三省堂と並んで有名で、
楽しい解釈で人気のある
新明解国語辞典


こちらで調べてみると、
的を射るのみ!

あれ。


となると、次はこれらと並んで有名で、
堅実無比な内容に定評のある
岩波国語辞典

これに載っていれば正しいと考えて間違いなしでしょう。
この辞書に判定を下してもらうことにします。


結果、
どっちもなし!

的を得るどころか、的を射るすら載っていませんでした。


たしかに、どっちも載せなければ、まちがう余地はありません。
ある意味究極の守りです。
さすが堅実無比な岩波国語辞典というところでしょうか。


でも考えてみると、これらは国語辞典なので
慣用句である「的を得る」を
載せる義務はないかもしれません。

そこで、本職である
ことわざ辞典も調べてみました。



新明解故事ことわざ辞典


結果、
どっちもなし!

まさかの両方載っていないパターンです。
ことわざ辞典なので慣用句なんて知らん、
ということでしょうか。


それならば
旺文社標準ことわざ慣用句辞典


こちらは
「的を射る」のみ。


だんだん頼りなくなってきましたので
最後は切り札、

三省堂故事ことわざ・慣用句辞典

これなら「的を得る」も載っているに違いありません。


と思ったら、こちらも
「的を射る」のみ!

ちょっと待ってください。


ほかはともかく、
あなたのところは言い出しっぺでしょう。

同じ出版社なのに
国語辞典では「的を得る」も載っていて、
ことわざ慣用句辞典では載っていないって、どういうこと?


と思いかけたのですが、これはおそらく
ことわざ辞典は国語辞典ほど
ひんぱんに改訂しないから、
以前の情報のままなのではないかと思います。


次の版では「的を得る」も載るんじゃないかと思います。


それ以外の辞書も、
今後、載せてくる可能性もあるかもしれませんが、
いまのところは載っていませんでした。

どちらの言い方も
間違いとは言えないかもしれませんが
現時点では「的を射る」のほうが確実に載っています。


まあ、ひとつでも辞書に載った以上
「的を得る」が間違いとは言えないのかもしれませんが
思ったより頼りない結果ですね。


まとめ、結局どうすればいい?


ということで、わたしの調べたものでは

・「的を得る」は三省堂国語辞典に載っている
・「的を射る」も載っている
・他の辞書には「的を得る」は載っていない


ということになりました。


なので、個人的には
どちらを使ってもいいのでしょうが
やはり「的を射る」のほうが無難だと思います。



「的を得るが誤用」という説は
テレビなどで言われてしまったためか
わりと広まってしまっているうえ、
ほかの辞書には載っていないので、こちらを使うなら

・載っているのは三省堂国語辞典第7版
・的(まと)の項目を見る


まで知っておくと完璧です。


そんなこと知らなくても
素直に「的を射る」を使えば
いいのかもしれませんが、

文字で書くのならともかく
話すときは「まとをいている」とか
言いにくいんですよね。



的を得るは誤用は間違い(ややこしいなあ)
みたいな感じで、テレビでバーンと
紹介されれば事情が変わると思いますが、
どうなっていくのでしょう。

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2 Responses to “的を得るが辞書に載っている!?あちこち調べた結果”

  1. スライム国 より:

    語学ではなく言語学の、しかも規範主義ではない記述主義の三省堂国語辞典に影響力及び正当性などありませんしありえません。

    簡単に言うと、規範文法は正しい言葉、記述文法は誤りだが使われる言葉。
    語学は規範文法、言語学は記述文法に寄り添うもの。

    辞書は「正しい言葉を載せる本」ではなく、「現在日本国内で多用される言葉・文字・読み・意味を、外国語かは無視・外国の用例も無視し、編集者の語感・見解によって正誤や意味などを決め、それを載せる本」です。

    詳しくは下記の私のブログ記事を読んでください。

    スライム国のおへや 「三省堂国語辞典第7版で誤り撤回で決着」論への反論
    http://surakokuheya.blog.fc2.com/blog-entry-3.html

    • みずしま より:

      たしかに
      「三省堂国語辞典に載ったから正しい」
      というわけではないですね。
      ご指摘ありがとうございます。

      辞書に載ったこと自体は事実でも
      それでどうなっていくかは
      これから様子を見ていきたいと思います。

      記事を修正させていただきました。

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