檄を飛ばす(げきをとばす)の意味は誤用されやすいが、かっこいい
テレビのニュースなどで耳にしますが、
誤用されやすい言葉です。
檄を飛ばす(げきをとばす)
たしかに文字から意味を推測することも出来ないですし、
よく見ると漢字もよく分かりません。
これじゃ間違うのも無理がないですね。
ただ、知らないとなんのこっちゃですが、
うまく使うと勇ましい言葉でもあります。
そのためか、そこそこ使われていますね。
いちど確認しておくといいでしょう。
こういう意味
檄を飛ばす(げきをとばす)とは、
自分の考え、主張を人々に知らせて、
決意や行動をさせるための文書を送る、
という意味です。
この言葉を使うときは
たおすべき相手がいることが多く、
「あの悪い男が大臣になってから国はめちゃくちゃだ。
ヤツをたおすのだ! みんな、立ち上がれ!」
このような文書を送った。
こういった使い方をされることが多いです。
かっこいいですね。
そしてみんなでわーっと反乱を起こして、その悪い大臣をたおす。
歴史の話などでいかにも出てきそうな話です。
有名な中国の話である三国志でも
董卓(とうたく)という悪いやつを倒すため、
曹操(そうそう)という人物が、
あちこちの英雄に、ともに戦うよう手紙を送る場面があります。
これも檄を飛ばす、という意味になります。
三国志おもしろいですね!
ただし現在では、
書面を送って決意や
行動をさせるような機会は
正直な話、あんまりないです。
そのためか、いまでは
手紙などの文書ではなく
ちょくせつ言葉を伝える場合も
檄を飛ばすと言うことがあります。
たとえば政治がよくないときには、
選挙で政権をかえることができるので
これもたおすと言え、そのために演説をすることがあります。
「いまの○○政権では国が悪くなる一方です!
つぎの選挙ではこのわたしに清き一票を! ぜひ! ぜひ! ぜひ!」
というようなものですね、
こういうのを檄を飛ばすということがあります。
まあどうしても、この言葉は、
国がどうだ、とうような大きな例文ばかりになりがちなので、
むりやり身近な例でいきますと、
「○○君はいじわるばかりしている。
だからみんなで止めるように注意しようよ」
こんなのも、意味を考えると檄を飛ばすと言えそうです。
こんな例はちょっと無理があるって?
そうですか。
たしかに意味としては間違っていなくても
「○○君のいじわるを止めさせるために
ボクはみんなに檄を飛ばすんだ!」
なんていう子供がいたらちょっとすごいです。
将来どんなおとなになるんでしょうね。
注意する点として、「檄を飛ばす」とは
「行動や決意をうながす文書」
つまり手紙などの書面を送るという意味なので
演説など、口で言う場合は
本来使わない言葉ということです。
すでにこういった、口で言う使い方も
世の中では認められつつあるので
今後はどうなるか分かりませんが、
すくなくとも今のところ、辞書には
「文書」とありますので、
この点も知っておくといいでしょう。
まあこの「檄を飛ばす」は古風というか、
すくなくとも本来の意味では
なかなか使わない言葉ではあります。
そのためか、
つぎのような、ちょっと違う意味での使い方をされることがあります。
こんな誤用をされているよ
この檄を飛ばすは、
誰かをはげます、という意味で使われてしまうことが多いです。
受験に失敗したつぎの日に彼女にふられ、
帰りにサイフを落として犬にほえられ転んでドブに落ちた友達に
「人生山あり谷ありさ!」
と檄を飛ばした、こういう使い方ですね。
はげますことを「激励(げきれい)」
と言うことがありますが、
おそらくここから来ているのでしょう。
どっちも「げき」とありますからね。
ただ、この檄を飛ばすには
はげます、という意味はありまません。
よく見ると、
「檄を飛ばす」と「激励」の「げき」は
違う漢字ですし、意味もまったく違います。
これについては続きで説明します。
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漢字までまちがわれるよ!
「檄(げき)」と「激(げき)」との違いについてです。
いっしょに見えるって?
ちょっと大きくしてみますね。
よいしょ。
檄 激
どうです? 大きくなりましたか?
へん(左の部分)が違いますね。
それぞれ「きへん」と「さんずい」です。
それで、「きへん」の「檄(げき)」ですが、
辞書を引いてみたところ、
むかし、中国で人をよび出したり、悪いことをやめるように言い聞かせるために、政府などが出した木の札に書いた文書。
だいたいこのようなことが載ってました。
むちゃくちゃ限定された意味の漢字ですね。
中国で、しかも昔の話、
今の日本で使う機会があるのでしょうか。
一応、もうひとつの意味として、
自分の考え、主張を人々に知らせて、決意や行動をさせるようにしむけるための文書、というのもあります。
ただ、これも用例は「檄を飛ばす」しか載っていませんでした。
ほかの使い方は「檄文(げきぶん)」ぐらいですかね。
よくこれだけのために漢字ひとつ作ったものです。
「〇〇選手が夏場の雨の日だけつかう特注シューズ」みたいなものですね。
つまり、この「檄」という漢字、
檄を飛ばすという言葉を知らなければ、まず知らないであろう漢字と考えられます。
しかも見た目もさんずいの「激」と似ているので、それは間違えられやすいでしょう。
でも「激を飛ばす」という書き方はないので注意が必要です。
あんまり使わない漢字だからだと思いますが
「きへん」の「檄」は、常用漢字にふくまれていないので
「げきを飛ばす」「ゲキを飛ばす」など、かな(カナ)で書かれることもあります。
使ってみるとかっこいいかも
ということで、この「檄を飛ばす」は
ふだんあまり使わない漢字を使っているうえ
意味も誤用しやすいのので、
あつかいにくい言葉のように思えますが、
じっさい使う分にはそうでもないです。
だって「行動をうながす」を「はげます」と間違えて受け取られても
はげまされて怒ることはふつうありませんからね。
会社で新しいプロジェクトをやるときなど
「チームに檄を飛ばしてくる」
と言えば、かっこよくて気分がでますし、
ちょっと使ってみるのも面白いかもしれませんね。
厳密にに本来の意味で使うなら
さきほど述べたように文書を送ることにはなりますが、
電子メールなどなら本来の使い方と言えるかもしれません。
※追記
コメント欄で
「檄を飛ばすは言葉で言うのではなく
文書を送ること」というご指摘をいただきました。
いまのところ、ほとんどの辞書でも
その通りに書いていますので、
記事を一部修正させていただきました。
ご指摘ありがとうございます。
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興味深く拝見しました。
でも、(目の前にいる人に)行動を促す(話をする)、というのはやはり誤用です。「檄」の意味はおっしゃる通り、「行動を促す文書」ですから、言葉ではありません。従い、檄を飛ばすの意味は、行動を促す文書を送る、という意味になります。ですから、現在で使う場面は非常に限られます。以前は、時代劇で遠方にいる味方や第三者に決起を促す手紙を出す場面にしか聞かれなかったけど、今は目の前にいる人に話す言葉として、多く使われていますね。言葉の意味は変化するものとはいえ、漢字の意味からずれていくのは残念です。
コメントありがとうございます。
たしかに「檄」は文書なので、「檄を飛ばす」も文書を送るということになりますね。
辞書でもそのように記載しているものが大多数ですし、ご指摘の通りに思います。
本文を修正いたしました。
一方で、口頭で伝える、演説するような場合も半ば許容されつつあるように思いますので、
「本来の意味とは違うが、そのような使い方もされている」
という書き方に変更させていただきました。
この言葉はこれから使う機会が減ってしまうか、
意味が変わってしまうのかもしれませんが、
由来と本来の意味は伝えていければと思います。
ご指摘ありがとうございます。
笑ってしまったのでコメント。
とても分かりやすく面白かったです。『よくこれだけのために漢字ひとつ作ったものです』がツボで。笑
周りに外国人が多いので、言葉なんて伝われば良い派なのですが、ふと漢字やことわざを調べるときがあります。
例文などもしっかり書かれていてタメになりました。
コメントありがとうございます。
記事がお役に立てたようで嬉しく思います。
この言葉は古風でありながら、今でもたまに見聞きすることがありますが、
こういうのは私も書いていて面白かったです。
これからも楽しくて役に立てる記事を書いていけるよう
がんばってまいります!