役不足(やくぶそく)とはなぜあんなにも間違いの意味で使われるのか

誤用されやすい言葉、慣用句は
数多くあれど、どれが一番かといえば
やはりこれが赤丸つきのトップ
といってもいいでしょう。

役不足(やくぶそく)


もう誤用といえばコレ
やくぶそくといえば誤用、

といった感じで

世の中では正しい意味と
間違った使い方が入り乱れて飛び交っております。

今回は役不足の正しい意味をのべるとともに、
なぜこれまどまでに間違われるのかについて
あらためて考えてみました。


まずは正しい意味を


役不足とは(やくぶそく)、
与えられた役目や仕事が
それをやる人の実力にたいして
軽すぎる、という意味です。


実力ある人にくだらない仕事をさせている
ということですね。


たとえば芝居や演劇で
人気も実力も一流の人気役者が
通行人のようなチョイ役をさせられたとします。


この場合、その役者自身も
「こんなつまらない役をさせやがって」
と不満に思うでしょうし

見ている観客も
「あの役者の演技をしっかり見たいのに
こんなチョイ役しか見られないなんて
つまらない!」
と思うでしょう。

「役不足」とは
こういった状態をあらわす言葉です。


したがって、正しい意味での使い方は
「彼のような立派な人物に
こんなつまらない仕事をさせるなんて
役不足もはなはだしい」


「先生のような実力ある方に
このような簡単なことをお願いするのは
役不足で申し訳ありませんが…」

といったものになります。


しかし、ご存知のように
このような意味で使われることは
むしろ少ないくらいで、
次のような誤用が広まっています。


よくされる使い方


文化庁が2012年に発表した調査結果では
この役不足、半分以上の人が
まちがって意味を覚えているとのこと。


それが
「役目にたいして実力が足りない」
というものです。

先ほどのべた本来の意味とは
まるきり逆になっていますね。


まあ、本来と違う意味が
広まってしまうこと自体は
この言葉にかぎらずあることです。


しかし、この「役不足」は
マンガなどの出版物で
次のような使い方をされているのが
より複雑になっていると思います。



「てめえじゃ役不足だよ、出直してこい」
「なんだと、もういっぺんいってみろ」
「ビシ」「ギャー」

…とか

「この者では役不足ですかな、
それでは真打ちの登場といたしましょう」
ゴゴゴゴ…。
「な、なんだ!?」
「うわわわわ」

みたいな感じですね。


これは

弱い相手と勝負する役は
強い人間にとっては物足りない、
つまり強い人間にとって役不足


と考えればとくに誤用ではないと考えられます。


しかし、ややこしい話ではありますが、

「強い人間と勝負する役は
弱い人間では実力不足」

逆の解釈もしてしまいやすく、
こうなると

「そうか、役不足とは役が大きすぎることなのか」
と反対の意味で覚えてしまいます。


しかも決めゼリフというか
かっこいい場面で使っているだけに
印象に残りやすいでしょう。


役不足が誤用されているというのは
けっこう知られているにも関わらず
なかなか正しい意味が伝わりにくいのは
こういった理由もあるのかもしれませんね。

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まちがった使い方は危険


しかし、この言葉は
役不足=役が不足している
ということで、あくまでも
役が軽すぎる(不足している)ということになります。


しかも、誤用が広まっているとはいえ
本来の意味が忘れ去られてしまったかというと
そんなこともないです。



なので、たとえば結婚式のあいさつなどで

「このような晴れ舞台で
私のような者があいさつを述べさせていただくのは
役不足でございますが云々……」

みたいな使い方をしてしまうと、
おそらく会場にいる人の何割かは心のなかで

(まちがえて使っている)
(まちがえてるよ…)
(あいつ、知らないんだな)


と思うことになり
モヤモヤとした空気が流れることでしょう。


また、仕事で上司に
「このような仕事、私には役不足ですが…」
などというと
なかなか挑戦的な意味になってしまいます。

まあ誤用されている、というのも
広く知れわたっているので
上記のような言い方をしたからといって
牙をむいて本気で怒る人も少ないとは思いますが、

少なくとも仕事や公の場では
正しい使い方をしたほうがいいでしょう。


ではどういった言い方をすればよいか


「役目にたいして実力がたりない」
という意味でふさわしい言葉はなにかというと

いちばん簡単に使えるのは
「力不足」です。


「このような仕事、私には力不足ですが…」
といえば、ちゃんと謙遜の意味になるので
わけも分からず怒られる、という心配はありません。

また、
「このような晴れ舞台で
私があいさつをするのは身に余る大役ですが」

といった言い方もできますね。

まあ、どちらも「役不足」のような
カッコよさには欠けるかもしれませんが、
まちがった意味になるよりはマシです。

実生活で謙遜として使う場合は
こういった言葉を使えばいいでしょう。


また、「役者不足」という
言い方をされることもあって
おそらくこの言葉は

役不足が「役が不足している」のだったら
役者不足と言えば「役者が不足している」

つまり実力が不足しているという意味になる、

ということで言われるように
なったのだとは思いますが
役者不足という言葉は辞書にはないです。

なので使っても意味が
通じない可能性があります。


すでに誤用が知れ渡っている言葉でありますが
正しい意味を知っている人も多いので
ちゃんとした使い方を
したほうが良さそうですね。

似た意味のものとしては
大根を正宗で切る
というものがあります。

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6 Responses to “役不足(やくぶそく)とはなぜあんなにも間違いの意味で使われるのか”

  1. 英介 より:

    「ほっほっほ、この者では役不足ですかな、
    それでは真打ちの登場といたしましょう」
    ゴゴゴゴ…。」

    →「この者には」ではなく「この者では」といっている場合、
    「この者では(あなたにとって役不足)」すなわち、「この敵役を倒すというミッションは、実力のあるあなた(主人公)にとって役不足だ」という意味になり、正しい用法だと考えられますが、いかがでしょうか。

    • みずしま より:

      たしかに「この者では役不足」だと
      誰にとって役不足かが違ってきて、
      正しい用法になってしまいますね。

      記事を修正させていただきました。
      ご指摘していただきありがとうございます。

  2. tanaka より:

    誤用を薦めているわけではないですが
    >しかし、文字を考えると
    >役不足=役が不足している
    >ということなので
    >正しい意味のほうが自然です。

    文字を見ただけでは
    役不足=役として不足
    とも捉えられるので誤用側も自然な解釈ではないでしょうか

    • みずしま より:

      確かにそういうとらえ方もできますね。
      ご指摘ありがとうございます。

      そう考えると、文字から正しい意味を考えるはむつかしそうなので、
      本文も少し修正させていただきました。

      あらためて、この言葉のむつかしさが分かったように思います。
      ありがとうございます。

  3. YUICHIRO より:

    「てめえには(俺の相手は)役不足だ!」
    ってのが代表的な誤用だから、
    「てめえじゃ(俺にとっては)役不足だ!」
    の方も誤用だと思い込んでる人が多いのかも。

    • みずしま より:

      コメントありがとうございます。

      同様のご指摘は受けていたのですが、上記部分については修正が出来ておりませんでした。申し訳ありません。

      あらためて本文を修正させていただきました。

      ご指摘ありがとうございます。

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