あなたは大丈夫?誤用しやすいことわざや慣用句
「これも誤用だったのか!」
世の中のことわざや慣用句は
想像以上にまちがって広まっているようです。
「景色が圧巻? あの新人は言葉の意味をよく知らないようだな。どれ、わしがちょっと教えてやろう」
「部長がそんな基本的な教育をなさるなんて役不足です。ここは私が!」
「わしでは役不足と言ったな! 許さんぞ! ふがふがー」
部長、あんたも間違えています!
このように言葉の誤用は、
濃い霧のように私たちの間にたちはだかり、
人間関係にひびを入れてきます。
これから述べていく、ことわざや慣用句は、
よく誤用されていたり
まちがった意味が定着しているものです。
上記のような悲しいすれちがいを防ぐために
これらの言葉の本来の意味と
世間でどのように使われているのか知っておくといいでしょう。
広く使われているが誤用とされるもの
多くの人が使っていますが
現在のところ、まちがいとされる使い方です。
「みんなが使っているから大丈夫」
と安心していると、ある日とつぜん
「それは誤用だよ」
ということになるかもしれませんので要注意です。
役不足(やくぶそく)
(正)実力に比べて役割が低すぎること
(誤)役割に比べて実力が低すぎること
有名なのはやはりこれです。
・まるきり反対の意味で定着している
・つい使いたくなるかっこいい響き
・そのわりに正しい意味を知っている人もいる
という、誤用で困る条件をきれいに兼ねそなえた
誤用の王様とでもいうべき存在です。
もはや言葉として使い物になりにくいぐらい。
最近では実際に使われることよりも
誤用の代表例として使われることのほうが多い印象です。
くわしくはこちらをご覧ください。
役不足(やくぶそく)とはなぜあんなにも間違いの意味で使われるのか
情けは人の為ならず(なさけはひとのためならず)
(正)人に情けをかけるのは自分のためになる
(誤)人に情けをかけるとその人のためにならない
「役不足」が誤用の王様なら
こちらは誤用の女王(?)といったところでしょうか。
はじめてこのことわざを聞いたら
間違ったほうの意味で解釈するのも無理ないですね。
こちらも正しい使い方と間違ったものが入り乱れて使われている印象です。
なお、なぜ人に情けをかけるのが自分のためになるのかは
こちらで述べています。
情けは人の為ならずは誤用されるが本当の意味は深かった
破天荒(はてんこう)
(正)誰もできなかったことを達成する
(誤)豪快で大胆、型破りなこと
豪快で大胆、型破りな方法で、誰もできなかったことを達成する、
と考えそうですが、
破天荒には豪快とか型破りの意味はないです。
漢字の雰囲気を見るとまちがったほうの意味で覚えそうですが、
こちらに書いてある由来を知ると
本来の意味が正しいことが納得できるでしょう。
破天荒(はてんこう)とはどんな意味か知っていないと困ること
忸怩たる思い(じくじたるおもい)
(正)はずかしく思うこと
(誤)くやしいと思うこと、思い悩むこと
誤用してしまっても
それなりに意味が通じてしまうのが、この言葉の特徴です。
それだけに、本当の意味を知る機会がなかななありません。
くわしくはこちらで。
忸怩たる思い(じくじたる思い)の意味、誤用すると恥の上塗り?
檄を飛ばす(げきをとばす)
(正)自分の主張を広くつたえ、行動をうながす文書を送る
(誤)はげます、発破をかける
まちがえてもそれほど深刻な事態にはならないかもしれませんが、
それだけに誤用に気づきにくいと言えるでしょう。
なんでこんな意味なのか、
「檄」ってどういう漢字なのかについては、こちらでのべています。
檄を飛ばす(げきをとばす)の意味は誤用されやすいが、かっこいい
他山の石(たざんのいし)
(正)他人の失敗から学ぶこと
(誤)他人の良い所から学ぶこと
(誤)自分には関係ないと思うこと
どちらの意味で使っても
それはそれで教訓にはなりそうですが、
使い方によっては失礼な言い方になるかもしれません。
なのでちゃんと意味を知っておいたほうがいいでしょう。
他山の石とはどんな意味か知らないととんでもないことに
圧巻(あっかん)
(正)ひとつの物事でもっともすぐれた部分
(誤)大勢の中でもっともすぐれているもの
(誤)迫力があること
なんとなく使っちゃう言葉ですが
本当の意味はあまり知られていないと思います。
まちがったほうの意味は
「圧倒」という言葉を使えば正しくなります。
圧巻(あっかん)の意味、この使い方はちょっと違う
天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)
(正)人はみんな大事な存在
(誤)自分だけが大事な存在
漢字を日本語としてそのまま解釈すると
どうしても間違った意味で考えてしまいがちですが、
これはもともと仏教用語で、
ここでの「我」は「個々の人々」といった意味です。
よく考えたら、
お釈迦さまがそんな自分勝手なこと言うわけないですものね。
くわしくは、こちらで。
天上天下唯我独尊の本当の意味と読み方、つい誤用しそうですが…
馬子にも衣装(まごにもいしょう)
(正)誰でも身なりがよければ立派に見える
(誤)孫はなにを着てもかわいい
まあ普通は「まご」といえば孫ですからね、
いまどき「馬子」なんて使わないでしょうし。
でもまるで違うどころか
たいへん失礼な間違いになりかねなないので
正しい意味をおぼえておく必要があります。
馬子って何? という方も
こちらで述べていますので、ごらんいただければと思います。
馬子にも衣装の意味、まちがった使い方をされるとイヤな気分になります
河童の川流れ(かっぱのかわながれ)
(正)上手な人でも失敗することがある
(誤)とても上手にやっている
これも誤用されることがあるようです。
河童の川流れは
猿も木から落ちると同じ意味ですが
「河童が泳ぐように上手」
と間違われることがあります。
河童の川流れの意味と使い方、実は誤用されることも?
これらの誤用は広く使われているので
まちがえても、そこまで問題にならないと思いますが
やはり正確な意味は知っておきたいもの。
ぎゃくに正しい意味を知っている場合、
「そういう使い方をする人もいる」
のを知っておくといいかもしれませんね。
つぎに、もはや間違いとは言えなくなりつつあるものです。
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新しい意味として認められつつあるもの
本来の意味ではない使い方が定着して
新しい意味として認められてきているものです。
なにをもって「認められる」とするかが問題ですが、
ここでは「どれかの辞書に載っているもの」
というのを基準にしています。
本来の意味・・・(本)
新しい意味・・・(新)
と書いています。
確信犯(かくしんはん)
(本)正しいことと信じて行われる犯罪
(新)悪いことと分かってやること
これは完全に誤用のほうが認知されていて、
そっちの意味で使われることが多いでしょう。
そのためか、辞書によっては両方の意味がのっているので
もはや誤用と言えないかもしれません。
くわしくはこちらをごらんください。
確信犯(かくしんはん)とは結局どっちの意味?
他力本願
(本)仏さまの力をかりること
(新)他人ばかりあてにすること
よく使われるのは新しいほうの意味で
自分で何もしない人をさしたりするのですが、
本来は仏教のありがたい言葉です。
これも辞書に両方の意味がのっているし、
広く定着しているので、
どちらの使い方をしてもまず大丈夫でしょうけれども
本来の意味も知っていたほうが教養が深まりますね。
こちらでくわしく書いていますので、よろしければごらんください。
他力本願(たりきほんがん)とはどんな意味か知らないと叱られるかも?
登竜門(とうりゅうもん)
(本)有名な賞や資格などをとって立身出世すること
(新)有名な賞や資格そのもの
登竜門は「竜門」という門を登ること、
つまり動詞のような言葉です。
しかし「竜登の門」といった感じで、
名詞として使われることが多いです。
くわしくはこちらに述べています。
登竜門の意味と使い方の誤用について
読み方、書き方がまちがわれやすいもの
意味そのものは正しく伝わっていますが
読み方や書き方がまぎらわしいものです。
会話でなく文字でのやりとりの時に、とくに気をつける必要があります。
肝に銘じる(きもにめいじる)
(正)肝に銘じる
(誤)肝に命じる
ついつい間違えて書きそうですが
こちらで漢字の意味を知れば
「肝に銘じる」が正しいことが分かると思います。
肝に銘じるの意味は知ると役立つ、ただし「肝に命じる」は間違い
杜撰(ずさん)
(正)ずさん
(誤)とせん、しゃせん
話すぶんには間違えようなないですが、
文字を読み上げていて、
いきなり漢字に出くわすと
とっさに間違えた読み方をしてしまうかもしれません。
大勢の前で言ってしまうと
「何言ってんの?」となります。
杜撰とは意味を知っても読み方を間違えやすい言葉なので注意
的を射る(まとをいる)、的を得る(まとをえる)
「的を射る」が正しく
「的を得る」が間違い、とされることが多いですが、
じつは両方正しいとされつつあります。
それどころか
「本当は的を射るがまちがい」
という意見もあって、
とても複雑なことになっている言葉です。
的を射るの意味と、「的を得る」が本当に間違いなのかについて
おわりに
よく言われることですが、
言葉は変化していくものなので、
いまは誤用とされているのが今後みとめられたり
その反対もおこりえます。
また、ここでは辞書を基準にしましたが、
辞書が100%正しいか? と言われると
そうとも言い切れないかもしれません。
辞書だって人間がつくったものですからね
なので、ここでの分類も
状況を見て変えていく可能性があります。
せっかく覚えた言葉の意味が変わるなんて
なんじゃそらー、という話かもしれません。
しかし、それだけに
「絶対に本来の意味しか認めんぞ!」
とか
「うるせえ正しいなんて知るかよ」
というように、
どちらかの使い方にこだわりすぎるよりも
あるていど柔軟に考えたほうがよさそうですね。
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記事冒頭の役不足の誤用についての説明文中の
>誤用で困る条件をきれいに兼ねそろえた
「兼ねそろえた」は「兼ね備えた」の誤用では?
たしかに間違えていますね。
もうしわけありません、修正させていただきました。
ご指摘いただき、ありがとうございます。
間違った意味で使われることわざに、旅の恥はかきすて が、あります。
本来は、知らない土地に来て、習慣も 違うのだから、失敗は 気にしなくて良い。
しかし 今は、旅行でやって来て、もう2度と来ないから、多少 悪さをしても構わない。
そう、変わってきている。
本来の意味を 載せている辞書も 少なくなっている。
誤用されて、それが本来の意味のように なるのは 仕方の無いことかも知れないが、本来の意味は しっかり載せてほしい。
コメントありがとうございます。
お返事が大変おくれて申し訳ありません。
なるほど、場所が変われば価値観も変わるので、このような意味で考えると良いことわざになりますね。
特に旅先で委縮してしまわないためにも、こういった考え方は大切なように感じます。
良い情報をありがとうございます。