人の振り見て我が振り直せの意味、なぜこんなにも言われるのか
とてもよく使われることわざです。
しかし、なかなかむつかしいことでもあります。
人の振り見て我が振り直せ(ひとのふりみてわがふりなおせ)
「あの人は陰口を言ってよくないね!」
と陰口を言ってしまうようなら、
このことわざを肝に銘じておく必要があるかもしれません。
また、いくつか気をつける点についても述べていきます。
意味のおさらい
人の振り見て我が振り直せ(ひとのふりみてわがふりなおせ)とは
他人の姿、やっていることを見て、自分自身を改めようという意味です。
ここでの「振り」とは姿やおこない、態度のことです。
「〇〇君はいっつも貧乏ゆすりをして、いやだなあ」
「人のふり見て我がふり直せだね! あんたも時々しているよ」
といえば、人が貧乏ゆすりをしてイヤだったから
自分はやらないようにしよう、という意味です。
「あの部長はお説教がムダに長くてつかれる…」
「お前もムダに長い説教してるよ」
「人の振り見て我が振り直せか、これからは気をつけよ」
こんな使い方ができます。
貧乏ゆすり、音を立てて食べる、説教、自慢など、
自分では気づきにくいけど、相手にいやな思いをさせるクセはけっこうあります。
ほかには
ほおづえをつく、人を指さす、鼻をほじる、愚痴、いやみ、舌打ち、鼻で笑う、威張る、
まあ、きりがないですね。
こういったことを誰かがやっているのを見たとき、
ただ「いやだなあ」と思うだけでなく、
「自分はだいじょうぶか?」
と確かめるようにすれば、かっこわるいことをしなくなるので、
このことわざは、かなりいいことを言っています。
よく使われるだけのことはありますよね。
なお、
「人の振り見て我が身を直せ」と聞くこともありますが、
辞書などには載っていないので、おそらく間違いだと思います。
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良いことに使えるの?
この「人の振り見て我が振り直せ」ということわざの意味は
他人のおこないを見て自分をあらためるわけですから、
言葉だけで見れば悪いところだけでなく、
人の良いおこないを見習うときにも使えそうに感じるかもしれません。
ただ、一般にこのことわざは、そのような使い方はされないです。
はっきりと「誤用だ」と書いているものは見つかりませんでしたので、まちがいとは言い切れないのですが、
多くの人は悪いところをなおす、という意味で考えるでしょうから、
「人のふり見て我がふり直せといいますから、先輩を見て行いを改めます! へへー」
とか言ってしまうと、
「オレのどこが悪いんだ! ケンカ売ってんのかい!」
と思われてしまう可能性が高いので、気をつけたほうがいいでしょう。
悪いところ探しが目的ではない
とはいえ、このことわざは
ひとの悪いところを見つけて批判するような意味ではありません。
あくまでも自分自身の行動を改めていくためのものです。
さっきの例のように面と向かって
「あなたを見て『人のふり見て我がふり直せ』を心がけます」
なんて言うと、ちょっとマズイかもしれませんが、
「わたしの座右の銘は『人の振り見て我が振り直せ』です」
と言えば、
「この人は自分の行いを改めるよう、がんばっているんだな」
という印象になるでしょう。
また他人の悪いところに文句を言うためや、アラさがしの目的でこのことわざを使うのも間違いです。
類語「他山の石」との違い
さっき座右の銘といいましたが、
おなじような意味で、座右の銘として使われることわざに
他山の石というものがあります。
意味はどちらも人のことを見て自分をあらためる
ということで、類語なわけですが、
どちらかというと「他山の石」は、
仕事の失敗や事故など、
大きな出来事や結果に使うことが多いようです。
いっぽう「人の振り見て我が振り直せ」は
日常のちょっとしたしぐさや行動に使われることが多い印象です。
あと、どちらも悪いところをあらためるときに使うことがほとんどですが、
他山の石は「他人の失敗やおろかな言行を」と
はっきりと書いてあるので、良いところを見習う、という使い方はまちがいになります。
むつかしいことだからこそ大事
このことわざが、とてもよく使われるのは、
やはり悪いところを直すのはむつかしいからなのでしょう。
最初の例でも、じっさいに
「お前の説教が長い」とか言っても素直に聞いてもらえず
「オレは相手のためを思って説教しているんだ! 悪くない!」
などと反論されることも多いです。
自分の悪いところは
気づかない
みとめない
直さない
ついこのようになってしまいがちですが
人の振り見て我が振り直せということわざの意味を知れば、
少なくとも「気づかない」というのは減らすことができますね。
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